大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)638 判決

主 文

原判決を破毀する。

本件を大阪高等裁判所に差戻す。

理 由

弁護人春原源太郎の上告趣意は、末尾に添えた別紙記載の通りであつて、論旨は

三点あるが、その第三点は、原判決は弁護人の申請した証拠に対し採否の決定をせ

ず終結判決した違法がある、というのである。よつて記録に当つて見ると、原審第

一回公判において弁護人は「被告人は精神を喪失する程度に酩酊していたかどうか

の鑑定願いたい」と陳べて精神鑑定の申請をしたところ、裁判所は同時に弁護人か

ら申請のあつた証人五名のうち二名を次回に喚問する旨を決定しただけで次回期日

を指定したこと、そして第二回公判においては、原審は先に採用した証人二名を訊

問した上「前回留保した証人は何れもこれを却下する」と決定しただけで結審した

ことが、それぞれ公判調書にしるされている。すなわち、原審が、公判廷でなされ

た精神鑑定の請求につき採否の決定をしないで結審したこと所論の通りであるが、

公判廷における証拠調の請求を却下する場合には決定でしなければならないことは、

旧刑訴法第三四四条第一項の規定によつて明らかであり、その決定を欠いたことは

正に同法第四一〇条第一四号の絶対的上告理由になるのである。もつとも大審院に

は、裁判長が各証拠調をした後、利益な証拠を提出し得る旨を告知したに拘らず、

被告人弁護人がこれなき旨答えて新に証拠申請をしないときは、留保の証拠調の請

求は拠棄したものと認められるから、裁判所が却下の決定をしないで結審しても違

法はない、という趣旨の判例があるけれども(大正一三年(れ)第一九五九号同年

一二月二〇日判決、昭和九年(れ)第五〇五号同年七月二三日判決等)、当裁判所

は右のごとき問答があつても「証拠調の請求を拠棄したものと解することは軽々に

許されない」と判決した(昭和二二年(れ)第一二九号同年一二月一一日第一小法

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廷判決、昭和二四年(れ)第二六三五号同二五年三月七日第三小法廷判決)。そし

て前記の「前回留保した証人は何れもこれを却下する」という公判調書の記載に鑑

定人も含まれるとは解し得ず、原判決はこの点において破毀をまぬがれない。

よつてその余の論旨の判断を省略し、旧刑訴法第四四七条第四四八条ノ二に従い、

主文の通り判決する。

以上は、当小法廷裁判官全員一致の意見である。

検察官 茂見義勝関与

昭和二五年九月一九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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